平成10年、360回忌を迎えた袋中(たいちゅう)上人(1552-1639)は、江戸時代、沖縄(当時琉球)に念仏の教えを広め、多くの民衆を救い導き、さらに各地で教化活動に尽くした名僧として知られる。今回は、その袋中上人を開山に仰ぐ福島県いわき市の菩提院を紹介しよう。
実はこのいわき市が、上人の故郷。幼い頃から機敏だった上人は14歳で出家。修学に励み、25歳の春には増上寺に上り、勉学に明け暮れる青春時代を送った。4年後、「郷里の人々にも布教を」と帰郷し、数年間、成徳寺の住職を勤めた。
菩提院が開かれたのは慶長4(1599)年、上人は48歳の時のこと。磐城平(いわきたいら)13万石の大舘城主・岩城貞隆が城内に建立し菩提院と名づけた念仏道場がその興りだ。袋中上人に深く帰依していた貞隆により住職として招かれた上人は、渡明のためにこの地を離れる慶長7年まで菩提院に留まり布教活動に邁進。城下には常に称名の声が響いたという。
関ヶ原の合戦後、岩城氏改易により鳥居氏が城主になると大舘城に代わって新たに平城が築かれ、同時に菩提院も城外へ移されて名を児島菴袋中寺と改めた。さらに二世良隠上人の代に菩提院町(現・平十五町目)に移転。現在の地に移ったのは大正時代で、旧菩提院の地には勢至菩薩を祀る「廿三夜尊堂」と呼ばれる小堂を残している。女性を守る仏さまとして信仰を集め、正月3日と毎月23日には縁日が行われている。
菩提院の本堂には、鎌倉から室町期の作と伝えられている阿弥陀立像が本尊に、脇には袋中上人が祭られる。
また磐城地方一帯では袋中上人によって始められたとされる(起源については諸説がある)念仏踊りの一種「じゃんがら念仏」が今も盛んに行われている。同院でも毎年8月13日に境内で奉納されている。
【交通】JR常磐線いわき下車。徒歩20分。
(浄土宗新聞 平成10年10月号より)
寺院番号 | 08-004 |
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山号 | 涅槃山 |
院号 | 菩提院 |
寺号 | 菩提院 |
所在地 | 〒970-8026 福島県いわき市平字古鍛冶町59番地 |
TEL | 0246-21-3188 |
FAX | 0246-21-3193 |