願成寺
“花の寺” 会津大仏光背の仏像はお守りに

郡山から磐越西線に揺られ、右手に磐梯山、左手に猪苗代湖の悠々たる眺めを楽しんでいると、約1時間で蔵の町・喜多方に着く。今回紹介するのは、この会津の地に770年の歴史を持ち、本尊に 丈六(じょうろく)の阿弥陀如来坐像を祀り、1名「会津大仏」として有名な古刹・願成寺(がんじょうじ)だ。

寺は嘉禄(かろく)3年(1227)開基で、法然上人の高弟・隆寛(りゅうかん)律師を開山上人に仰ぐ。律師は同年に起きた「嘉禄の法難」でこの地に流罪となるが、80歳という老齢でもあり、京からの途中、飯山(神奈川県厚木市)にとどまり、当地へは弟子の実成房を遣わした。 実成房はこの地に1庵を建立、律師を迎えに飯山に戻るがすでに律師は入滅されていたため、その庵に遺骨を葬ったのが願生寺のおこりだ。
のち、戦乱などで衰微したが、江戸時代初期に行誉上人によって再興、杉木立に囲まれた静かな境内にたたずむ山門、本堂、庫裏はいずれもその頃の建造である。

観音・勢至菩薩像をともなった 丈六の阿弥陀如来座像は、昭和58年建立の新阿弥陀堂に安置されている。平安末期から鎌倉初期の作と推され、国の重要文化財にも指定されており、光背には約1000体もの小さな仏像が並ぶという珍しいもの。この小仏像は、お守りにと武士が懐に忍ばせて戦地に赴き、無事に環るとまた戻したといわれ、150体ほど欠けて空いているのは、戦死して戻せなかったからと伝えられている。

境内とその周辺には「願生寺古墳群」と称される墳墓が多数存するほか、愛染明王碑も祀られており、縁結び、福得の益で信仰を集めている。
往時の様子を復元した新阿弥陀堂前の池庭は、季節になると、檀信徒の善意で植えられた、さつきや紫陽花など多くの花々で彩られる。“花の寺”としても親しまれる願生寺はこれから最もいい時期を迎える。

【交通】JR磐越西線喜多方駅から加納行きバスで約20分。

(浄土宗新聞 平成10年5月号より)

寺院情報
寺院番号 08-131
山号 叶山
院号 三宝院
寺号 願成寺
所在地 〒966-0931 福島県喜多方市上三宮町上三宮字籬山833番地
TEL 0241-22-1565
FAX 0241-22-1616