ダイヤモンドアイランドと呼ばれる美しい伊豆7島のひとつ神津島。ここに島内唯一の寺、濤響寺(とうこうじ)がある。島内のほとんど家がこの寺の檀家で、毎日熱心な檀信徒が朝に夕に参拝する。
この寺は、伊豆下田の海善寺の末寺として、寛永16年(1639)休和上人によって開かれた。もとは現在の本堂向かいの高処山に矢割山の山号で寺を構えていたが、季節風と幾度かの火災との関係で、島の西に重要なものを移すことになり、同寺も移転。また文化元年(1804)に起工、文化4年に完成、全島民の力により本堂を再建。悲願の造営で、梁に使われた見事な角材までも人力で切り出した。
本堂にまつられる本尊阿弥陀如来にはちょっとしたいわれがある。十夜に生まれて十夜に亡くなったという通称「十五夜婆」が、夢枕に立つ阿弥陀さまからお告げを受けたという。「明日の朝多幸湾に三躰の仏像が流れ着く…」。年代は定かではないが、当時の檀家である「十五夜婆」がお告げのとおり妹を連れて浜に行ってみると、確かに三躰の仏像が横たわっていたという。そのうちの一番大きな阿弥陀如来を菩提寺にまつり、残りの2躰を妹と家に持ちかえり仏壇にまつった。現在も両家の本尊として先祖を守っている。
同寺の寺宝としては、延命山の山号を筆された扁額がある。これは8代将軍吉宗の孫、左近少将源定信(松平定信)の書で、第18世住職の代、文政2年(1819)に寄進されたもの。当時の白河藩主の金字が厳かに参拝者を迎える。
新島、式根島と並び神津でも供華と墓の掃除はお年寄りの日課となっている。毎朝、濤響寺では施餓鬼を行い、その時間に合わせて色とりどりの花を抱えたご老人が訪山する。
温暖な気候は年間を通し、美しい花々を恵む。ちょうど今は白百合の季節で墓地一杯にに捧げられた純白には美しく荘厳な趣がある。この島では毎日が施餓鬼であり、毎日がお盆でもある。
白浜に建てられた墓地は綺麗に譜き掃き清められ、一年中絶えることのない供華と香(こう)には島民の先祖に対する思い入れと信仰の深さが伺える。
浄土宗新聞平成5年7月号より記載
寺院番号 | 13-426 |
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山号 | 延命山 |
寺号 | 濤響寺 |
所在地 | 〒100-0601 東京都神津島村899番地 |
TEL | 04992-8-0025 |
FAX | 04992-8-0025 |