大乗寺
―匠の技が残る寺―本尊は善光寺型弥陀三尊

富士登山の基地、そして富士五湖や箱根への玄関口である御殿場は、市街を外れると深い森が広がり、富士山麓の広さを実感させる大自然がある。
ここには源頼朝(みなもとのよりとも)によって建立された新橋浅間神社があるが、今回は今なお豊かな自然に包まれた御殿場仁杉(ひとすぎ)の大乗寺を紹介しよう。
この寺は、文明元年(1469)光誉上人を開山に建立されたもので、本尊は善光寺型の弥陀三尊を祀り、木造銅版葺きの本堂に荘厳さを加えている。昭和43年以前は茅葺きであった。現本堂は明和8年(1771)に再建を開始し、天明6年(1786)の上棟式まで16年、また位牌堂その他、屋根の完成までには50年もの歳月が費やされたらしい。言い伝えでは、再建当時植林された檜を屋根の垂木に使ったという話も納得のいくところだ。
本堂建築には、江戸大工平内大隅(へいのうちおおすみ)の名が残り、木割り法の大隅流の技術が隅々に見られる。堂内には、大隅流を学んだ立川内匠、二代富昌の立川(たてかわ)流彫刻が、外陣(げじん)の「子持龍」をはじめ、内陣(ないじん)の「四季の欄間」などにあしらわれ、立川流と幕府御用達の職人芸の合作が調和している。また年代は不明だが欄間の下に掲げられた二十五菩薩来迎の彫刻も見事なもの。
また山門右手の鐘楼横には、大本山増上寺八十二世の椎尾弁匡大僧正の慕碑が建てられている。大正11年に開催された全国共生結衆が同寺で行われ、以後毎年会場なっていたことから「永遠の命―ときはいま―」の名言を刻み記念としたもの。
寺宝としては、現在本堂内に安置されている十一面観音像をはじめ、多く蔵されているが、この像は二メートルを越える立派なもので、天保12年(1841)の作。今後は寺檀一団となり観音堂を建ててそこに観音像を安置することが目標。檀信徒との絆の強さが印象的であり、ここらへんにも神谷住職の人柄がうかがえた。
本堂、鐘楼堂、表門は平成13年12月改修完了。

浄土宗新聞平成5年5月号より記載

寺院情報
寺院番号 20-048
山号 廣智山
院号 佛心院
寺号 大乗寺
所在地 〒412-0005 静岡県御殿場市仁杉857番地
TEL 0550-89-2482
FAX 0550-89-2489