華陽院
−家康の祖母を祀るー三河松が往時を偲ぶ

浄土宗と関係の深い徳川家康の母方である源応尼(げんのうに)が、静岡駅からほど近い華陽院に祀られている。
家康は三河岡崎の松平家に生まれ、幼名を竹千代といったが8歳から19歳まで駿河の今川義元の人質となり、駿府(今の静岡)に住まわされていた。その当時、世話をしていたのが源応尼で、住居は華陽院前身である知源院の近所で、竹千代はよく寺に遊んだという。住職の知短上人はいつくしみの心をもって竹千代を迎えるとともに文筆の師となり、その弟子文慶師は竹千代と同年代で、遊び相手でもあったというから思い出も深いところであった。後に、今川義元の先陣を受け浜松にあるとき、源応尼の訃報を聞くが、悲しんだ家康は知らせにきた文慶師に墓を知源院に定め、三河松を墓所に植えることを頼み、その冥福を祈ったという。その松は昭和十五年まで墓所にあったが、静岡の大火で焼け、現在は徳川家の子孫によって植えられた二代目の松が、往時をしのばせている。華陽院の名は慶長十四年(1609)、家康が駿河に引退したとき、源応尼の50回忌を営んだ際、その法名である華陽院殿をもとに寺名を定め、以後参勤交代の際には各大名が必ず参詣をしたという。
寺にはまた、慶長15年に7歳で亡くなった家康の娘の市姫も源応尼の墓に隣合わせて祀られている。母、お勝は娘の死を悲しみ、尼となって念仏生活に生涯を送ったという。
奉納されていた徳川家ゆかりの品々は残念ながら大火や戦災で焼けて、現在は家康の軍配、市姫のひな屏風(びょうぶ)などが残り、市の美術館などで保管、展示されている。

浄土宗新聞平成5年2月号より記載

寺院情報
寺院番号 20-086
山号 玉桂山
院号 華陽院
寺号 華陽院
所在地 〒420-0839 静岡県静岡市葵区鷹匠二丁目24番18号
TEL 054-252-3673
FAX 054-252-3656