龍音寺
空海作の千手観音 お乳かたどる絵馬奉納

愛知県小牧市に、母乳を授けてくださる観音さまをお祀りしてある有名なお寺があるというので訪れた。

なるほど観音堂には真新しい乳の絵馬がたくさん奉納してあり、霊験あらたかなることを実感させられる。この寺は龍音寺というが、通称「間々(まま)観音」と呼ばれ尾張33漢音の24番札所となっている。
明応元(1429)年、小牧山を猟場とする狩人がおり、その腕は100発100中だった。狩人は弓を持って小牧山に登ると鹿の群れに出会い、弓を射ると1列に並んだ鹿に命中。すると鹿は光り輝きながら7つの石になり、その中央から千手観音菩薩像が現れた。狩人は驚きと共に、弓を捨て、矢を折って尊像の前に伏して礼拝をした。そして狩人は村人と共に草庵を造り、観音菩薩像を祀ったという。
その後、旅の老僧がこの菩薩像を参拝した折、「これは空海が入唐する時、鎮護国家を祈って自ら作った金銅仏である」と言い、多くの信仰を集めることとなった。
しかし、風雨などによって堂宇が倒壊寸前に。侍の林心斎がこれを見かね、永正2(1505)年に田畑を売って新しい堂宇を建立。その後、天正年間(1573─92)に祖玄和尚が現在の間々に寺として整え、小牧山にあった像を境内に移した。
ここに祀られている観音像が“間々観音”で、その信仰の多さは、寛文5(1665)年に編さんされた『正事記』に村に乳飲み子を抱えて夫に先立たれた女性が、観音像に祈願したところ、たちまち乳があふれ出たという由来が記してあり、参詣の人たえず、大変栄えているとあるほど。
近年も本人は出産経験がないが、先妻の子が亡くなったため、孫のために乳を授かった老婆がおり、育った子が現在もお参りに来ているという。
また参拝者に、安産や子授け、水子供養、虫封じ、交通安全、厄除けの祈願を行っており、お乳の絵馬を奉納して参拝する信者が後を絶たない。
【交通】名鉄犬山線岩倉駅か名鉄小牧線小牧駅から来るまで10分ほど。

(浄土宗新聞平成11年5月号より)

寺院情報
寺院番号 22-111
寺号 龍音寺
所在地 〒485-0048 愛知県小牧市間々本町152間々観音
TEL 0568-73-6173
FAX 0568-75-2244