円成寺
丈六の仏や曼荼羅を祀る -名僧 関通上人興隆の寺-

名古屋市の西に位置する津島市、現在は内陸部だが、古くは木曽川の河口、海に面していた。鎌倉時代に新田開発が行われたという市内の中一色町の田園風景の中で、ひときわ目を引く伽藍が、訪ねる円成寺だった。
円成寺は江戸時代の名僧、関通(かんつう)上人(1696-770)によって興隆された寺だ。
開創は明らかでないが、新田開発と時期を同じくし、真言宗として開かれたという。江戸時代初期から浄土宗の西方寺となり、関通上人は13歳のとき同寺で出家、後に江戸に下り学問を修め、念仏信仰に深く入っていった。そして帰国の折、箱根の関で、「わが身の流転生死の関所を越えるには、本願念仏を手形とするのがもっともなり」と悟り、関通と名乗るようになったという。
西方寺に戻って寺をかたく戒律を守り念仏を称える道場である浄土律院とし、伽藍を整備、円成寺と改めている。
現在の境内も往時の面影を深くとどめ、落ちついた景色のなかにもピンと張りつめた雰囲気がただよっている。
黒門、蓮の生い茂る放生池(ほうじょういけ)にかかる石橋の先の朱色の山門、階上に梵鐘を備えた白い龍宮型の鐘楼門と、三つの門をくぐると、正面に庫裏、左手に重層の本堂と経蔵、右手に曼茶羅堂、善光寺如来堂などの諸堂が並ぶ。
ご本尊は関通上人に帰依した信者が、財産を投げうって寄進したという丈六(像高約3層)の阿弥陀如来座像。天井までとどく大きなお姿と慈愛に満ちたお顔に、多くの人々が手を合わせる。
また、曼茶羅堂には、奈良の当麻寺の観経曼茶羅を写した一つで、関通上人が譲りうけたという、縦横約4層の曼茶羅が所蔵されている。4月の第2日曜日をはさむ3日間ご開帳が行われるが、いつの頃からか縁結びのご利益がある「良縁曼茶羅」といわれ、良縁を望む若者や新婚のお礼参りの姿が巨立つという。

【交通】近鉄富吉駅からタクシーで約10分。

(浄土宗新聞平成10年8月号より)

寺院情報
寺院番号 22-209
山号 慈興山
院号 甘露院
寺号 円成寺
所在地 〒496-0025 愛知県津島市中一色町西訳101
TEL 0567-31-0822
FAX 0567-31-0822