松龍寺
こころゆさぶる1000体仏 木屑から生れた仏の世界

階上に梵鐘(ぼんしょう)をそなえた鐘楼門、苔むした木々に囲まれた本堂、境内を流れる小川。そのひとつひとつが、ここを訪れる人の心を自然となごませる。そんな寺を、福井平野の中心、福井市の北方にある金津の町にみつけた。
松龍寺(しょうりゅうじ)は、奈良時代の養老年間(717─24)、この地に仏教の教えを広めて歩いた泰澄大師が、仏教守護の帝釈天(たいしゃくてん)を祀ったことに始まる。戦国時代にはこの地も激戦の地となって、焼け野原となったというが、当時の住職(天台宗)は、ここを去らずに庵を建て、戦死者の霊を弔ったという。
浄土宗になったのは、江戸中期、承応元年(1652)に福井・浄土宗運正寺に住した逸秀上人が、藩の命をうけて住職となってからのことで、以来、念仏道場として連綿と多くの民衆を救ってきた。
寺には歴史を物語る数々の諸像・諸堂があるが、驚かされるのは24世智山上人が彫ったという千体仏だ。安政3年(1856)、能坂という地にあった「能坂長範物見の松」という名木が枯れた。彫刻をたしなんだ智山上人は、それを知って民衆のためにと、立木のままに大仏を作ったという。そしてさらに、木屑も大切に残して、そこから1000体の阿弥陀仏像を彫って寺に安置をした。
現在、本堂に向かう参道、左脇に千体仏像が建立されて、その一千体の阿弥陀仏像が安置されているが、その堂内をのぞくほとんどの人が思わず声をあげるという。三方の壁いちめん、5つの段に、身の丈20センチほどの阿弥陀立像がぎっしり立ち並んでおり、その中に入ると、まさに仏国の世界に迎え入れられた気持になる。こころがゆさぶられるというのは、こういう気持ちのことをいうのかというほどの感動だ。
ご本尊は等身の阿弥陀如来座像。円光大師(法然上人)福井25霊場の21番にもなっている。また、寺の開創に由来する帝釈天を祀る帝釈堂も本堂の裏手の木立の中にあり、人々の信仰を集めているほか、古戦場の支社の霊を慰めたという3体の石仏を祀る三体仏像も、寺の前を走る県道脇に建てられている。
【交通】JR北陸線・芦原温泉駅下車。車で約10分。
(浄土宗新聞平成9年1月号より)

寺院情報
寺院番号 27-007
山号 帝釈山
院号 得勝院
寺号 松龍寺
所在地 〒919-0725 福井県あわら市前谷第11号2番地
TEL 0776-74-1221
FAX 0776-74-1221