虚空蔵寺
尼僧さんが開創した寺 福徳と知恵の菩薩さま

福井駅から西へ2キロほど行くと小高い山が見えてくる。足羽(あすわ)山と呼ばれる山だが、この山の中腹に虚空蔵(こくぞう)寺がある。この足羽山というのは元来古墳だったようで、福井県由来の継体(けいたい)天皇(450―531)が開いた山で、現在では足羽神社を中心に公園になっている。
虚空蔵寺へは福井駅から行くと、足羽川を越えた交差点を過ぎ、すぐ左折する。すると愛宕(あたご)坂と呼ばれる石段を昇るようになる。その石段をちょうど百八段昇り終えると虚空蔵寺がある。
開創は寛永6(1629)年、同地の豪商慶松五右衛門尉重廣の持仏の安置所として建立されたが、その後、信蓮法尼により浄土宗の寺院として開山された。
この寺にはその寺名のとおり、霊験あらたかな虚空蔵菩薩が祀られている。虚空蔵菩薩は虚空(空間)のように無量の知恵や功徳を持っている菩薩で平安時代頃から貴族の間に広まった菩薩だ。ご本尊は弘法大師が入唐のおり、青龍寺慧果阿閣梨から授かった霊木で自らが刻み、現在の福島県の円蔵寺に安置した福満虚空蔵大菩薩のご分霊だ。
足羽山のふもとに住んでいた重廣が福満虚空蔵大菩薩を信仰しており、毎年参拝に出かけていた。ある時、重廣が「わが尊像を持ち帰り祀れ」という夢告を受け、告げられた所へ行くと仏師がちょうど彫りあげたところ。これを持ち帰り、現在の場所へお堂を造り安置したという。この菩薩さまは福徳と知恵を授ける菩薩さまとしてあがめられているほか、丑寅生まれの守り本尊ともされている。また、難治とされた皮膚病のナマズにも良いと伝わり、治癒した人たちがナマズの絵馬を奉納したなどのことから愛宕坂の“なまず堂”とも言われた。現在では秘仏として17年に一度ご開帳され、多くの参拝者によってにぎわうという。
【交通】JR福井駅からタクシーで7分ほど。
(浄土宗新聞平成7年5月号より)

寺院情報
寺院番号 27-015
寺号 虚空蔵寺
所在地 〒918-8007 福井県福井市足羽一丁目6番25号