極楽寺
開創は仏頭から ─南朝の合言葉に「極楽寺」─

浄土宗新聞平成7年11月号の続きとして、奈良県御所市の「葛城(かつらぎ)の道」にある極楽寺を紹介しよう。
九品寺を後に「道」を南に進むと、途中に土蜘蛛塚のある森脇、古い民家の美しい名柄、さらに南に向かうと金剛山のふもとの極楽寺に至る。古い地名をもって吐田(はんだ)の極楽寺という方が通りが良いそうだが、南北朝時代は楠木正成の祈願寺となり河内、金剛、吉野の要所として南朝側の合言葉に「極楽寺」が用いられたともいう。
寺が開かれたのは約1050年前の天暦5年(951)。奈良・興福寺の座主を務めた一和上人は学徳に秀で広く知られた僧だったが、名利を嫌い静かに修行に専念できる場所を求めていた。ある時、金剛山の東に毎夜光を放つ場所があり、不思議に思い、その場所を探し求めると、そこから阿弥陀仏の頭がでてきた。そして、こここそ有縁の地と草庵を結び、仏頭を本尊として法眼院となづけたという。上人はこの地で修行を積み極楽の様相を感じるなかに往生をしたという。仏頭山の山号には開創の歴史がこめられている。
そしてその300年後、浄土宗第三祖良忠上人の弟子の林阿上人が寺に入り、広く念仏の布教を行った。
寺には霊仏と仰がれる天得(てんとく)如来の絵像が本堂脇のお堂に祀られている。
この如来さまは林阿上人の代、ある武士が狩りの途中で出会った鹿を今にも射ろうとしたところ、鹿は行者に姿を変え、その行者から授かったものと伝えられている。そしてその行者が生命の尊さ、仏道修行の必要を武士に説いたことから武士は出家、後に絵像が極楽寺に奉納されている。毎年4月15日には天得如来のお会式(えしき)が行われており、霊験あらたかと多くの参詣者でにぎわいをみせる。
山号由来の仏頭は残念ながら400年ほど前に戦火で焼かれ現存しないが、その後に祀られた阿弥陀如来(鎌倉時代作)が現に檀信徒をみ守っている。
【交通】近鉄御所駅から五条行きバス鳥井戸下車、徒歩2分。

(浄土宗新聞平成8年1月号より)

寺院情報
寺院番号 30-252
山号 佛頭山
院号 法眼院
寺号 極楽寺
所在地 〒639-2331 奈良県御所市南郷1639番地
TEL 0745-66-0145