国道をそれ、急坂をしばらく昇ると、ミカン畑に囲まれた集落の中の浄土寺に至る。
寺伝によると開山は法然上人の弟子の真観房感西上人で、その後に衰退したが、弘治元年(1555)にやはり浄土宗の僧、量誉宗散上人によって再興されている。ご本尊は聖徳太子が一彫ごとに3回礼拝をして彫ったと伝える阿弥陀如来で、霊験あらたかと信仰を集める。そして、この霊験を伝える話が「蹴破山(けわりさん)」という寺の山号にこめられている。文録元年(1592)3月この地に水田を作るために山奥に池を掘り、水路を引くことになった。しかし途中に大岩が現れ行く手をさえぎった。何日も村人がそれを叩き動かそうとしたがびくともしなかった。ところが10月14日の朝、岩は2つに割れ、さらにそこには血が流れていた。怪しんだ人々は点々と残る血の跡をたどると、何と寺のお堂に続き、阿弥陀如来の足の甲が2つに割れていた。人々はこれを仏さまのおかげと尊び、足の割れを継いだが、再三再四継いでも一晩で離れた。これが続き、人々は毎日お堂に参ることとなり深い信仰に目覚めたという。以来、阿弥陀如来は「蹴破阿弥陀如来」と呼ばれ、2つに割られた大岩は人々によって現在も大切に守られている。この阿弥陀如来への報恩感謝の法要である「十夜法要」が毎年11月8日から15日に行われて、たいへんにぎわうことから、浄土寺は別名「十夜寺」とも呼ばれている。特に14日の昼と夕、ご本尊のご開帳が行われることから、屋台もでるにぎわいになる。また、寺に伝わる双盤念は、近年過疎化が進み継承する若人がいないため地域の指導者によって地元の小学生に伝承されており、その奉納も行われている。現在は、かつての賑わいはないが静かに法会が営まれている。
【交通】JR阪和線海南駅・湯浅駅から車で国道424号線経由で30〜40分。有田鉄道金屋口バス停から車で15分。
(浄土宗新聞平成7年4月号より)

寺院番号 | 31-127 |
---|---|
山号 | 蹴破山 |
院号 | 西方院 |
寺号 | 淨土寺 |
所在地 | 〒643-0128 和歌山県有田郡有田川町大字西ケ峯1466番地 |
TEL | 0737-34-2014 |