南海電鉄をご利用の方はご存じであろうが、岸和田駅と貝塚駅の間に“蛸地蔵(たこじぞう)”という駅がある。この駅名にもなっている蛸地蔵を祀る天性寺を紹介しよう。開山は天正年間と言われているが、天保年間の火災で、記録をすべて失ってしまい詳細は不明。しかし、唯一残された『聖地蔵尊縁起絵巻』によってその歴史をたどることができる。
【絵巻のあらすじ】
時は建武年問、岸和田を大津波が襲った。しかし被害はほとんど無かった。不思議に思った人々が海岸に出ると、一体の地蔵菩薩像が蛸と共にあったという。これは岸和田の守り本尊であると城内に祀ったが、世はまだ戦乱の世。尊像に危害があってはと城の濠の中に入れてしまった。
その後、天正年間に紀州勢が岸和田に攻め込んで来た。多勢に無勢で岸和田は危うくなったが、一人の白法師と無数の蛸が現れ、敵を殺害することなく、退却させた。城主は喜び、その法師を探したが、結局分からなかった。ある夜、法師が城主の夢枕に立ち、自分は地蔵菩薩の化身であると告げたので、濠に入れた尊像を出してお祀りした。
その後、一般の人にもその御利益を受けられるように、現在の地に移されたという。
天性寺は阿弥陀如来と蛸地蔵尊を本尊として祀るが、秘仏の蛸地蔵は毎年8月23日と24日に行われる地蔵盆の「千日大法会」でご開帳される。特にこの日は、家内安全や無病息災を祈るたくさんの参詣者でにぎわうという。
また昔から当寺に参れば、子供の脱腸(ヘルニア)に良いと言われ、現在では神経痛やリウマチを治す願かけ参りも随時行われており、1から3年間の願かけの間は蛸を口にしてはいけないという。
取材の帰り際、老夫婦と中、年夫婦の一家が“お礼のお参りを……”とやって来た。ご利益があったようだ。
【交通】南海電鉄蛸地蔵駅から西へ徒歩5分弱。
(浄土宗新聞平成10年12月号より)
寺院番号 | 32-399 |
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山号 | 護持山 |
院号 | 朝光院 |
寺号 | 天性寺 |
所在地 | 〒596-0067 大阪府岸和田市南町43‐12 |
TEL | 072-422-0773 |
FAX | 072-422-2360 |