親縁寺
戦国時代の傷痕が今も残るお念仏の心を伝える寺

浄土パズルの応募はがきに「追伸 私共のお寺は小さくまとまった檀家50軒ほどのお寺です。……中略……新聞に紹介して頂きたく思います」とあった。さっそく取材の申し込みの電話をした。JR大阪駅から福知山線快速電車で揺られること1時間半ちょっとで谷川駅に到着。さらにタクシーで15分ほど行った所に親縁寺はあった。
「こんな山奥までよく来ましたね。こんな小さな寺じゃ紹介することなんて何もないですよ」と住職。
氷上郡山南町は、人口1万4千。四方を山々に囲まれた風光明媚な土地で江戸時代から続く薬草栽培が名産という。
「ここは、明智光秀の丹波攻めの最終の地なんです。一言で言えば、戦国時代の傷痕を今もなお残す所なんです。遺跡などは見ることができますが、人の心は見えません。戦争で負けた所は今も心の傷として受け継がれています」

開山は天正7年(1579)。岩尾城主の菩提寺として創建され、当時は石蓮寺と号していた。しかし光秀によって落城と共に寺も焼失した。その後、豊臣秀吉の家臣佐野下総守が親縁寺として復興したという。本尊の阿弥陀如来像には、「湛慶仏 貞和4年(1348)○月○日修復也 康俊」の朱書銘があり、県の重要文化財だ。
「やっぱりお念仏。お念仏を行じなければいけませんよ。お念仏を行じれば、自然とお念仏の心が分かってきます。そうすれば、人の心の痛みや命の大切さが分かってくるんです。寺の住職が率先して行じていれば、檀家だって自然と寺に眼を向けてきます」
数年前、檀信徒の発願によって書院改築が、また今度、檀信徒の発願により山門改修や五重相伝会も行われる。
はがきを出された檀家の前田肇さん(44歳・建築板金業)は、「住職は檀家の名前と個人の戒名を全部覚えているんですよ。寺には亡き父の作った物が一杯あり父を偲ぶことができます」と。住職のお話を聞きに行ってはいかが。

(浄土宗新聞 平成8年12月号より)

寺院情報
寺院番号 33-215
山号 舌丹山
寺号 親縁寺
所在地 〒669-3157 兵庫県丹波市山南町和田1258番地の2
TEL 0795-76-0673
FAX 0795-76-0673