九州の玄関口、福岡。この地に日本で最初の開閉式ドーム型球場、福岡ドームが作られたことはまだ記憶に新しい。このドームにほど近い静かな住宅地の中に成道寺がある。
寺は武蔵国出身の呑益(どんえき)上人によって元和二年(1616)に今とは別の場所に創建されたが、寛永十八年(1641)に現在の場所に移されている。それから三回ほど改築を行っているが、今でも当時の面影をかしこに残している。山門をくぐると、長い参道が本堂までまっすぐにのびているが、その途中の左手に「八兵衛地蔵尊」というお地蔵さまがある。
元禄時代、とある町で火事が起こり、この時、唐人町と某町の消防組との間で喧嘩が始まった。某町の方に三人の死者がでて、町奉行が出てその場は収めたが、事件は裁きを受けることとなった。
これを成道寺のほとりに住んでいた森八兵衛が聞いた。八兵衛は以前、大病を患い、隣人の手厚い看護のによって九死に一生を得たことを非常に感謝していた。この八兵衛が「父母妻子のある若い命が失われるのは非常に悲しいことだ。一人身の私がこの罪を受けましょう」と両町に願いでた。両町とも切羽詰まった状況だったことと、八兵衛の意志が強かったことなどから八兵衛に刑が執行された。
この供養のために立てられたのが八兵衛地蔵である。今日では消防の守り地蔵とあがめられ、毎年八月の施餓鬼会には各町から多くの消防団が纏を持って参詣に訪れる。本尊さまは慶長八年(1603)に漁師の網にかかって引き上げられた阿弥陀如来像で、初めは大漁満足の霊験がある恵比寿さまとして祀られていた。しかし、「呑益上人を求めよ」との夢告があり、また、呑益上人も「彼の地に参れ」との夢告をうけ、互いに落ち合った所が成道寺だったという話が伝わる。今では“願い事がかなう仏さま”として有名で参拝も多い。
浄土宗新聞平成6年12月号より記載
寺院番号 | 42-139 |
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山号 | 八相山 |
院号 | 松樹院 |
寺号 | 成道寺 |
所在地 | 〒810-0063 福岡県福岡市中央区唐人町1丁目8‐53 |
TEL | 092-751-3377 |
FAX | 092-751-4355 |