古くから大陸への要港として、また城下町として栄え、今もその面影が残る唐津市。虹ノ松原や茶器をはじめとする唐津焼でも有名だ。浄泰寺は、地下鉄乗り入れのJR唐津駅から歩いて5分ほどのところだ。
寺は今から約420年前の天正2年(1574)に、清凉坊として建立された。開山は、鎌倉大本山光明寺6世智誉上人の弟子で、その当時の知恩院の僧、真誉上人で、学徳すぐれた方だった。
本尊阿弥陀如来は、藤原時代の寛和2年(986)に、恵心僧都が母親供養のために一刀三礼しながら刻まれたというもの。都で何百年にもわたり、「願い事がかなう」と、多くの人々の信仰をあつめていた。信心深かった唐津領有・波多三河守は、公役で上京し比叡山の聖境を詣でた時に、この霊像を見てその美しさに感動した。その夜、阿弥陀さまの慈悲深い夢を見たことから、領民の守護仏にと願い、総本山知恩院の特命により真誉上人を伴って、持ち帰った。唐津に来てからも、不思議な力がある生身(いきておられる)の阿弥陀さまと深い信仰を寄せている。
また、祖廟・位牌堂の本尊として安置されているのは、唐津の近海で引き揚げられた、いわゆる「流れ仏」の阿弥陀如来で、そこに戦乱の難を逃れた25菩薩を配して祀られている。いろいろな楽器を手にする諸菩薩は今にも音を奏で出しそうなほど。来迎を目の当たりにするような立体的な構成だ。門を入るとすぐ左に「閻魔堂」があり、格子から中を覗くと、いかめしい閻魔さまに見据えられる。「えんま寺」とも呼ばれる同寺には、延宝5年(1677)狩野宗信作の「地獄極楽図」(唐津市重要有形民族文化財)がある。釜茹でをしている姿、舌を引き抜く様子などが生々しく描かれ、炎燃え盛る地獄が見て取れる。この絵図は、毎年8月16日の「えんま祭」で、閻魔堂内部とともに公開されている。
(浄土宗新聞平成8年10月号より)
寺院番号 | 43-039 |
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山号 | 清凉山 |
院号 | 勝巖院 |
寺号 | 浄泰寺 |
所在地 | 〒847-0814 佐賀県唐津市弓鷹町1494番地 |
TEL | 0955-72-3335 |
FAX | 0955-72-3335 |