選擇寺
祐崇上人、老松の鶏で一寺を建立する」

(浄土宗新聞平成9年9月号より記載)

今年12月(平成9年)に東京湾を横断する道路が開通する。その千葉側に位置するのが木更津(きさらず)市。歴史は古く、古代、日本武尊が東征の際、弟橘姫(おとたちばなひめ)の死を悲しみ、ここを去ることができず、君不去(きみさらず)とよんだことから、「きさらず」の地名ができたという。中世には木更津は鎌倉と房総を結ぶ海上交通の拠点となっていた。
今回はこの木更津の港に近い選擇寺を紹介しよう。

寺が開かれたのは今からおよそ550年前の享徳3年(1454年)のこと。鎌倉大本山光明寺第九世の観誉祐崇(ゆうそう)上人開かれている。
祐崇上人がここに一寺を建立しようとした由緒は、山号の鶏頭山(けいずさん)に表されている。
上総(かずさ)の地を布教に歩いていた祐崇上人は、同地にあった西休院を仮の宿としていた。その周りには竹林があり、その老松では、毎朝、一羽の鶏(にわとり)がときを告げていた。
上人はこの風情から、中国の「鶏頭山(インドマガダ国にあったという鶏林精舎に由来)」の故事を思い、この地に寺を建立することに思いいたったという。
祐崇上人はまた十夜法要の勅許を時の後土御門天皇からうけ、浄土宗で初めて勤めた僧としても著名で、選擇寺でも十夜法要は古くから行われ多くの参拝者を集めている。
ご本尊は先ごろの修復で、平安時代後期の作と判明した立像の阿弥陀如来。普段は秘仏だが、毎年、10月20日に行われる十夜法要の時だけご開帳が行われる。

境内には歌舞伎の「世情浮名横櫛(よはなさけうきなのよこぐし)」で名高い、源氏店(げんやだな)の通称「こうもり安」の墓がある。公演が行われる際には役者さんのお参りもあるという。
また、毎年、8月16日にはお閻魔(えんま)様の縁日も行われており、寺に伝わる地獄極楽絵図を公開し、参詣者でにぎわっている。

【交通】JR内房線木更津駅から歩いて2分。

寺院情報
寺院番号 14-021
山号 鶏頭山
院号 西休院
寺号 選擇寺
所在地 〒292-0067 千葉県木更津市中央1丁目5番6号
TEL 0438-22-2293
FAX 0438-22-0522