極楽寺
有馬温泉の歴史を語る床下に 秀吉の湯屋跡

神代の時代にまで源をさかのぼれる有馬温泉。極楽寺はこの中心地にある。
寺は伝承によると聖徳太子の開創。後に衰退したが、奈良時代に僧・行基が建立した温泉寺に、鎌倉時代の僧。仁西が12の宿坊を作り、その1つとして復興したという。法然上人も訪れて説法をされたと伝えられ、法然上人は中興の祖となっている。
極楽寺では平成6年、豊臣秀吉が使った、湯屋(浴場)の跡が書院の床下で確認されるという大発見があった。信長の家臣であった頃から秀吉はたびたび有馬温泉を訪れ、特に天下統一以後は北政所(ねね)のために別荘を建てたり、茶会を催したりとこの地をこよなく愛していた。
湯屋はこのねねの別荘(現・念仏寺)に隣接していたが、慶長元年(1596)の大地震で崩れたとされていた。
以前から床下に石組みがあることは知られていたが、それが湯屋の跡であることが確認されたわけだ。寺の裏手には極楽泉源があり、そこから湯を引いてきた跡や排水路などが備わっている。広さは約40畳で、屋根がつき、当時はその中に木製の風呂桶があったと推定されている。
寺の庭には秀吉の遺跡であることをしるす五輪塔(ごりんとう)も残されている。
徳川家康の代に秀吉のものはすべて打ち壊されたといわれているが、ここだけは奇蹟的に残ったようだ。
本尊は万治2年(1659)にここを訪れた厭求(えんぐ)上人によって彫られた阿弥陀仏像。そのほかにも法然上人直筆と伝えられる南無阿弥陀仏の名号軸とニ祖対面の図、聖徳太子の依頼で鳥仏師がつくったという火除観音などの寺宝が祀られている。
昨年の大地震で大きな被害をうけ、本堂は修理中、書院は解体修理を行うことになっているが、参詣は可能。秀吉の湯屋跡は現在は見ることはできないが、書院完成の折には公開できるとのこと。
【交通】神戸電鉄有馬温泉駅から徒歩約5分。

(浄土宗新聞 平成8年8月号より)

寺院情報
寺院番号 33-121
山号 海中山
院号 傅法院
寺号 極楽寺
所在地 〒651-1401 兵庫県神戸市北区有馬町1642
TEL 078-904-0235
FAX 078-904-1765