長福寺
元就に大将の相あり 寺宝の袈裟はお礼の陣羽織

NHKの大河ドラマで放映されていた毛利元就。今月は、元就が生涯忘れられない思い出を残した長福寺を紹介しよう。
お話をうかがったのは、先代住職の寂龍師。寺と元就の関係を語っていただいた。「寺の開山の三休上人は、享禄3年(1530年)、13歳の時に大本山清浄華院に入山。当時のご法主、第26世寿光上人に教えを受け、学識に優れ、霊能力も備えていたらしいですよ」その後、三休上人は天文8年(1543年)に病で母親を亡くし、不孝の罪を詫びながら帰郷。廃寺だった長福寺を再建した。
「時はまさに戦国の世。出雲の尼子氏を、周防の大内氏が攻めていたんです。大内氏は作戦の失敗により敗退。大内氏についていた元就もボロボロになり、この辺に逃げてきたんです。そして長福寺にかくまってもらったんです」疲れきった元就の顔を見た三休上人は、元就の過去現在をずばり見通し、中国地方のすべてを手中に入れる大将の相があると予言した。
「元就は嬉しかったでしょうね。出発の折には、敵の矢が当たらないという矢違いのお守りをもらったんです」その後、三休上人は、永禄元年(1559年)に清浄華院の第二十八世の法主に迎えられたが、父の要請により再び帰郷。長福寺に住した。元就は、その後、尼子氏に討ち勝ち、中国地方を手中に入れ、出雲大社参拝後、お礼を述べに同寺を訪れている。「涙ながらの対面だったようです。元就は大将の相があるという言葉が頭から離れなかったのでしょうね。もし、この言葉がなければ…。お礼に着ていた陣羽織や周囲の土地を寄贈しました。その陣羽織で作ったお袈裟や矢違いのお守りは、今でも寺宝として残っており、希望者にはごらんいただいております。また私も清浄華院の執事として勤めたこともあり、不思議なご縁を感じています」
元就が訪れた地とは、思えないほど静かで、心落ち着く長福寺であった。
(浄土宗新聞平成9年5月号より)

寺院情報
寺院番号 36-002
山号 寿智山
院号 玉亀院
寺号 長福寺
所在地 〒699-2211 島根県大田市波根町706番地
TEL 0854-85-8822
FAX 0854-85-8823