発生寺
災害に流された歴史-坂本竜馬ゆかりの寺-

南国情緒あふれる四国・高知県・須崎市にたたずむ発生寺を紹介しよう。
ここから歩いて5分ほどの所に太平洋に面した海岸があります。ですから穏やかなときは美しくていいんですが、地震や台風があるとすぐに津波や高波が……昔から大変な所だったようです」という住職。そのため過去帳や開山・の資料など津波で流され、古いことは分からないという。
「現存する最も古い亨保4(1719)年の過去帳には、宝永(1704〜)年の津波によって過去帳や古記録をすべて流失したとあるんです。また本尊は観世音菩薩(市文化財)なのですが、損傷が激しく修理したところ鎌倉時代の作ということが分かりました。ですから、この寺も鎌倉時代にはあったのかも」
元々同寺は西願寺と称していたが、幾度も津波などの災害にあい、現在の地に移されるとともに、寛延元(1748)年に発生寺と改称された。
「災害という不運だけでなく、高知の寺は廃仏殿釈でほとんど廃寺になりました。発生寺もです。檀信徒はしばらく神式で慶弔を行っていたようですが、どうしても仏教をとの声が高まりました。そこで、熱心な檀信徒同士が相談し、縁のあった知恩院の末寺で、廃仏をまぬがれた愛媛県の来迎寺と関係のあった九州の僧侶に再出発の基礎を整えてもらいました。そして廃仏殿釈後の荒廃した発生寺の最初の住職に、私の祖父が迎えられ、中興開山上人となり、現在の発生寺があるのです」また境内には、坂本竜馬手植えの松やゆかりのお地蔵さんが安置されている。
「明治維新の頃の住職は、勤皇家で社会慈善家の有名な方だったようです。ですから同じ勤皇派の竜馬も度々訪れては、そのような話で盛り上がったんでしょうね。竜馬は酔った勢いで、木刀で地蔵の首をはねたんです。今でも首がとれていますよ。竜馬の最期を思うと、地蔵を粗末に扱ったからと言う人もいます」

【交通】皿土讃線須崎駅から徒歩5分ほど。
(浄土宗新聞平成10年4月号より)

寺院情報
寺院番号 40-044
山号 大善山
寺号 発生寺
所在地 〒785-0010 高知県須崎市鍛治町4‐9
TEL 0889-42-0166
FAX 0889-43-1947