無量寺
藤原時代の彫像様式を示す佳作である。鎌倉時代の作であるが、作者については不明である。像は直立する躯身をわずかに捻り腹から腰にかけて納衣の線は左右対照でなく、正面観の単調さを破っている。螺髪(らほつ)はよく揃い、面貌は引き締まった眉目に端麗な趣を示し、丸みを帯びた頬は温和しく、眼は玉眼が嵌入され、白毫(びゃくごう)、肉髻(にっけい)ともに水晶が嵌められている。躯身は細身ではあるが繊弱に流れることなく、通肩の納衣をかけた曲線はいかにも伸び伸びとした藤原仏の感じを与えてくれる。ことに側面から見るとき、やや偏平に見える胸部の線も、ずっとふくらんだ腹部に流れていとも美しい曲線を描き出している。納衣の彫りも翻波式のおもかげを止めており、決して強からず浅きに過きることもない。阿弥陀如来は、西方極楽浄土のあるじであるが、この如来に念仏するものすべてを接受して、死後に無限の生をあたえることを大願の一つにしている。この極楽浄土での往生の仕方には九つの等級があり、これが仏像の印によって示されている。両手とも肘から曲げ、第1指と第2指を捻ずる説法印をとる全国的に数少ない仏像である。着衣は裳(も)を下に、その上に僧祇支を、さらに袈裟(けさ)を偏組(へんたん)右肩に着ている。裳(も)は腹部をおおい脚下にまで高く着ている。彫出された螺髪(らほつ)は髪際線においてかるく波形をつくる。構造は頭体部通して前後2対矧で、両腕、着衣の袖の部分に各部材を矧、両手首、前腕部を矧付け袖口にさす。着衣の衣文は腹部から膝下部にかけて緩やかな円弧を描いている。像は昭和30隼に修理されている。桧(ひのき)材を用い彫眼、漆箔で像高122.5である。
寺院情報
寺院番号 | 42-181 |
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山号 | 香林山 |
院号 | 冷智院 |
寺号 | 無量寺 |
所在地 | 〒830-0044 福岡県久留米市本町8番地の4 |
TEL | 0942-32-3010 |
FAX | 0942-32-2701 |
URL | http://muryoji.net |